さいたま商工会議所運営の地域情報サイト「マイタウンさいたま」エッセイコーナーに連載中のQ&A「分かってるつもり? 男と女の胸の内」を1回遅れで掲載しています。
浦和カウンセリング研究所所長 大関洋子が、実際に研究所を訪れたクライアントさんの相談の中から「男と女の問題」に絞り、プライバシーに配慮して構成した事実に基づくフィクションで、「職場編」「恋愛編」「夫婦編」「親子編」「子親編」の5つの話題を提供しています。
今回は職場の問題のQ&A。
第246回【職場編】「コンペはスカートな」
【Q】
私の会社は、時々ゴルフコンペを開きます。そういう時は、多少ゴルフのできる女子社員とまだ無名な女子プロゴルファーを動員します。私は多少できるので、コンペの時は必ず参加させられるんです。ゴルフは嫌いじゃないので参加させられるのはいいんですけど、服装は「スカートな」って言われるのと、部長が私の家まで迎えに来るのがすごく嫌なんです。もちろん自宅の住所は知られているのは仕方ないんですけど、直接ドアのところまで来られてピンポン押されるのはちょっと。「どこかまで行きますよ」って言っても、「手間じゃないから」の一点張りで聞く耳を持ちません。スカートのことも「もう足を出す年齢でもないし、冷えるのでパンツじゃダメですか?」って聞くと「そうだよな」と言いながら「そのために2万円手当出してるんだから頼むよ。営業の一部だから」と言われてしまいます。もちろん勤務にはしてくれているんですけど、会社が手当を出してるとは思えないので、部長がポケットマネーで出しているんだと思います。
【A】
部長のポケットマネーの2万円、部長が家のドアまで来てピンポンを押す。あなたも「勤務にはしてくれているけど、会社が手当を出してるとは思えない」と言っている通り、スカートで来てもらいたいのは部長ですよね。これは明らかに「セクハラ」です。
ゴルフウエアのスカートは、ミニスカートやフレアスカートには基本的にインナーが一体化していたり、下に短パンを履いていたり、いわゆる「見せパン」を履いていたりするので、部長が期待する「チラリズム」とは一線を画してはいます。それでも部長はティーアップの時やグリーン上でパッティングラインを読むときにアングルによってはスカートの奥まで見えそうでドキドキしているのでしょう。
NHKの女子プロゴルフのテレビ中継を観ていたら、パッティングラインを読む選手に対するアングルが、ほとんどすべてスカートの奥まで見えそうなアングルになっていたことがあって、驚いたことがありました。民放のテレビ中継では、そんなアングル見たことがありません。カメラマンの故意としか思えない頻度だったので、問題にならなかったのが不思議なくらいです。NHKという公共放送でそんなことがあるのですから、「スカートな」との要求は、部長にとって特別なことではないのかもしれません。
1565年ごろ、スコットランドのメアリー女王がシートン城の近くでゴルフに興じていたころは、まるで夜会にでも行くようなパフスリーブ(ちょうちん袖)にロングドレス、頭には鶏のトサカのような帽子を被っていました(女性服飾史による)。スカートの裾が短くなったのは、第一次世界大戦後、女性の社会的地位が叫ばれ、機能性を優先するようになってからです。女性ゴルファーのファッションも紆余曲折ありながら、動きやすいように軽快になっていきますが、ゴルフファッションの原則は不特定多数の集まるゴルフ場で周囲の人に不快感を与えないこと。ファッションは時代と共に変質していきますが、どんな時代のファッションもこの原則に則っていることは変わりません。
2017年、全米女子プロゴルフ協会は「スカート、スコート、ショーツは、立っているときも屈んだときも、いついかなるときも、ボトムエリアを隠し得るに十分な長さでなくてはいけない」と決め、競技重視へと動き出しています。男性の視線を集めるウエアよりも試合で競い合う方に情熱を傾けろと言っているわけです。
日本では宮里藍さん(ヘソ出しファッションで有名)が登場したころから女子プロゴルフ人気はうなぎ登りで、最近では男子ツアーのTV中継がない日に女子のTV中継だけがあるということもあるくらいです。日本の女子プロゴルフ界は現時点でアメリカとは逆のルックス重視、ファッション重視の方向に進んでいるように見えます。ギャラリーやTV視聴者の興味もルックスやファッションに影響されていることも確かでしょう。たまにレギュラーツアーにも出場する息子の友人の女子プロゴルファーはコンペに引っ張りだこだそうです。コンペに呼ばれるのは、女子であることが重要な要素になっているという現実があります。
とは言え、それは自分自身を売り物にしたプロの世界のこと。ゴルフの実力はもちろん、時にはルックスやファッションを売り物にしてでも有名になることが必要なのは当然です。あなたは、ゴルフのプロではなく一般企業の社員です。コンペに参加するとしても、ゴルフの実力やルックス、ファッションなどで賃金を得ているわけではないので、参加を強いられている他の女子社員と一緒に「性的」なことを売り物にしようとするのはやめてもらうよう部長や上司に勇気を出して話してください。理解してもらえない場合には、コンペの参加自体を断りましょう。