さいたま商工会議所運営の地域情報サイト「マイタウンさいたま」エッセイコーナーに連載中のQ&A「分かってるつもり? 男と女の胸の内」を1回遅れで掲載しています。
浦和カウンセリング研究所所長 大関洋子が、実際に研究所を訪れたクライアントさんの相談の中から「男と女の問題」に絞り、プライバシーに配慮して構成した事実に基づくフィクションで、「職場編」「恋愛編」「夫婦編」「親子編」「子親編」の5つの話題を提供しています。
今回は親子問題のQ&A。
第244回【親子編】「嫁へのプレゼントはエプロン」
【Q】
我が家は、家事も子育ても夫婦平等にこなします。ほぼ完全にジェンダーフリーと言えると思います。子どもたちも成人して、息子2人が家庭を持ったのですが、先日息子たち家族と旅行に行く機会があったんです。それぞれ子どもがいて、夫婦でよくやっているなあと感じているので、嫁に感謝の気持ちを伝えるつもりで、お土産という程度のプレゼントを用意したんです。夫には話さず私が用意したんですけど、選んだのは「エプロン」でした。宿について2人の嫁に「いつもありがとうね」と言いながらプレゼントを渡すと夫が「えっ!エプロンなの?」と言いました。私もハッとして「あっ、やっちゃった!」と思いました。自分ではジェンダーフリーのつもりでいるのに、無意識に染みついているものが時々出てしまうことがあります。もし相手が婿だったらエプロンはなかったと思います。こういう感覚が子どもにジェンダーを植え付けていくんだよなぁと反省しました。どうしたら私に染みついたジェンダーの感覚が抜けるんでしょうか…
【A】
11月7日の朝日新聞に「共働き妻の“ワンオペ”いつまで?」という見出しで「家事育児夫との差4時間38分、15年変らぬ負担」という記事が出ていました。「ワンオペ育児」の言葉を社会に広めた明治大学の藤田結子教授らがまとめた調査で、6才未満の子を持つ共働き夫婦の一日の家事・育児関連時間は、妻は6時間33分、夫は1時間55分という結果が出ています。
妻のワンオペ育児の背景には夫の「長時間労働」が指摘されてきましたが、今回の調査では早めに帰ってくる夫が何人もいましたが、妻がいくら言っても育児や家事をやらない夫がいるというのです。なぜでしょうか?ここであなたの相談の心や体に染みついたかのような「男らしさ」「女らしさ」が出てくるのです。調査の対象になった男性達は、出世や昇進にとりつかれておらず、仕事がそんなにしたいわけではないのに、妻が育児や家事をする間、夫がスマホゲームをしている家も少なくなかったそうです。育児や家事をまめにやる女性が「女らしい」というジェンダー分業的な「支配の志向」だと藤田教授は言っています。そして、ここがまたとても厳しいところですが、女性の方も「女らしさ」の規範を心の深いところで、そのように捉えているということです。まるであなたの様に…。
高所得の女性は、家事代行サービスを人知れず使ったり、ミールキットを買ったりしてしのいでいますが、それ以外の女性たちは、近所に実母などがいなければ、他者にケアされていないのです。今、私も近所に「実母」などがいなければと書いてしまいました。「実父」でもいいし、夫の父や母でもいいのに、なぜ社会的に家事育児はもちろん介護まで(夫の両親の介護も含めて)も女性の仕事と決まったように言われているのか…。そしてそれができる女性が「女らしい」とたたえられるのか…。15年経っても調査での情勢の負担は変わっていません。
おそらく、あなたが教育を受けた保育園や幼稚園、小学校では、保育士さんや先生は女性なのに園長先生や校長先生は男性が多かったり、出席簿の順番は男の子から始まっていたりしていたことでしょう。高校で家庭科共修が始まったのもまだ二十数年前のことです。やっと始まったばかりのジェンダーギャップの解消も2021年の世界経済フォーラムの公表では、1位はアイスランド、日本はずっと下の120位でした。
さて、あなたの問題点は何でしょう。そう、自分はジェンダーフリーのつもりなのに「嫁」に「エプロン」を渡して「女らしさ」をそこに求めていたんです。無意識にすり込まれた「男らしさ」「女らしさ」は、あなたの中にも存在するんですね。それに気づいたあなたは立派です。そして、「えっ!えぷろんなの?」と言ってあなたに気づかせてくれた夫を持ったことに感謝しながら次の世代を育ててください。