【Q】8年前に就職して、5年前に結婚、3歳の息子がいます。出産後も仕事は続けてきました。子どもは最低2人と思っているので、現在妊活中です。ここ数年で会社の出産育児に対する考え方が大きく変わり、産休、育休は取りやすくなったし、夫が育休を取ることもできるようになったので、2人目の決心がつきました。保育園にも入れる見通しなので安心して出産できます。問題は、その後のことなんです。私は積んできたキャリアを元にもっとキャリアアップしたいというか、一生仕事をしていたいと思っているんです。もちろん夫も賛成で、「僕より君の方が優秀なくらいなんだから、しっかり社会に貢献すればいいと思う」と言ってくれています。社内でも女性を管理職に登用し始め、私にも管理職の道が開けていると思えるようになったんです。ところが、同僚の女性たちの中でそんな話をすると一気に場がしらけてしまって、話題を変えられてしまいます。私だけが浮いていると感じます。女性社員の多くは未だに「女は家庭」と考えているみたいで、露骨に「私達の負担が増えるってことも考えてほしいよね」と言う人もいるくらいです。男性社員にはそんな意識はなく、「優秀なんだからどんどん管理職を目指した方がいいよ」と言ってくれる人がほとんどです。女性が働くことに対して、女性にブレーキをかけられてしまうなんて…。女の人たちとも仲良くやっていきたいし、どのように対応すればいいか困っています。
【A】少子高齢化と労働人口の低下が叫ばれる中、女性の社会進出は重要な課題の1つとなっています。そこで注目されているのが、女性を管理職に登用する必要性です。指導的地位に就く女性の割合は、アメリカの42.7%、イギリスの34.2%と比べ、日本は11.1%と低い割合に留まっています。(ILO調査)日本では、家事・育児・介護は女性の仕事という根強い意識があり、育児や介護を理由に離職する女性も珍しくないため、男性中心の雇用状況を改善できていないのが現状です。
役員や管理職の女性の割合が少ないと企業経営に女性目線の意見が反映されず、女性が働きやすい労働環境が作りにくいという悪循環になってしまいます。ロールモデルになる女性管理職が不在の現状では、女性従業員の意欲やキャリア志向も高まりません。女性を重要な労働人口にしたい国としても、この悪循環を断ち切ろうと、1985年の男女雇用機会均等法をはじめとして、1999年には男女共同参画社会基本法、2016年には「女性活躍推進法」を成立施行して、「就労状況、条件の男女差を解消し男性の暮らし方や意識改革も進めて、女性が活躍できる社会にするため」の法整備を進めました。
今年は、働き方改革関連法によって、物流、運送、建設、医療などの分野の労働環境が大きな影響を受け、多くの課題が発生すると思われます。女性の労働力が必要とされ、女性が働きやすい労働環境を確保するためにも女性を管理職に登用することが急務なのですが、あなたが感じているように管理職になりたいと思っても、会社との問題だけでなく、時に女性社員の中で浮いてしまうという問題などが起こったりもします。
私たち女性は、長い間「家事、育児、介護は私たちの仕事」と思い込み、自分の子ども、両親、夫の世話はもちろん、夫の両親の介護まで背負い、よい母、よい妻、よい嫁としてやってきた人が多いのです。
前述のように、国は女性の社会進出を促そうと様々な法整備はしてきているものの、一方で労働時間を制限した方が結果的に優遇される「130万円の壁」(夫の扶養の範囲内で働かないと損をする)は残されたままです。
さて、あなたは意識改革の先頭に立っています。あなたからすると「当たり前のことをしているだけなのに受け入れられない」という思いがあるかもしれませんが、あなたが正しく、「女性は家庭」という女性が間違っていると考えるのではなく、様々な事情で自分とは違う考えを持っている人がいるということをまず受け入れ、自分の考えを強調することなく、男性社会の中で共に苦しみながら戦っている女性という意識を持ってみてください。「女性は家庭」と考えている人たちも女性としての生きにくさは感じているはず。あなたが自分たちを認めてくれているということが分かれば、必ず応援に転じてくれるはずです。
第276回