【Q】
高校1年の息子と中学2年の娘がいます。
息子は小さいころから優しい子で、男の子ですから自分のことを「オレ」と言ったり、妹に「××しろよ」と指示や命令することはありましたけれど、妹の面倒はよく見てくれるし、怒鳴ったり暴力を振るったりということもありませんでした。
ところが妹の方は、物心ついたころから乱暴で、兄に食ってかかったり殴りかかったりすることもよくあり、兄に「おめえ」とか「てめえ」とか言うので、強い調子で怒ったら何年かは収まっていたんですけれど、小学4年生くらいのころから、自分のことを「オレ」とか「自分」とか言うし、兄や私に「××しろよ」とまるで、男の子みたいな口の利き方をするようになって、今もそれがずっと続いています。思春期を迎えれば、少しは女の子らしくなるかと思ったのですが、いつになったら女の子らしくなってくれるのでしょうか。
【A】
日ごろ何気なく使っている言葉をあなたのように男の子と女の子というジェンダー格差の視点から見つめ直すことはとても大切なことです。男の子みたいな口の利き方が続いている娘さんが、「女の子らしく」しゃべってほしいと悩んでいらっしゃます。男の子、息子さんは「オレ」と言ったり、妹に「××しろよ」と命令することはあったけれど“優しい子”で、女の子、娘さんの方は「自分」と言ったり、兄や私に「××しろよ」という乱暴な子だと困っています。これは、日本だけでなく世界中の問題で、ようやく「女ことば」と「男ことば」の成り立ちや、その違いとそれによる制約などの研究が始まったところです。
あなたが娘さんに「女らしい」言葉遣いをしてもらいたいと言っている「女ことば」の特徴に、分かりやすいものが2つあります。まず「女ことば」には「悪態をつく言葉」や「相手を罵倒するような言葉」がありません。悪態をついたり、相手を罵倒するような言葉を叫ぶことは、不満や怒りを発散する力があるとイギリスの科学者、エマ・バーンは実験の結果として発表しています。「人間が氷水に手を入れていられる時間を何もしていない時と罵倒語を発している時とを比べると罵倒語を発している時の方が1.5倍くらい長くなる」と。悪態や罵倒語を叫ぶことで気が紛れるからでしょう。
「くそっ、この野郎!」「こん畜生」「ふざけんな!」「馬鹿野郎!」「めんどくせぇなあ、もう」「すっとぼけんな、カス!」等々。この中の言葉を人前で口に出す女性はほとんどいませんよね。
昔、「かわいい女は天国へ行くが、生意気な女は地獄へ行く」と言われましたが、1994年、ドイツでミリオンセラーになったウーテ・エーアハルトの本の中では「生意気な女はどこへでも行ける」となっています。こんなことでも世界の大きな流れが分かります。
もう1つの特徴は、「命令形がない」ことです。女性が痴漢に遭った時、多くは「やめて」と叫びます。「やめて」は、「お願いの言葉」で、相手を従わせる強さを持たない言葉です。もし、男性だったら多くは「やめろ!」となりますよね。
あなたの娘さんが「男ことば」を使う深層心理には、「男女差別」に対する違和感があるのでしょう。最近では女の子が使う言葉に、男、女に関わらない「中立語」が増えてきています。少しずつではありますが、「男ことば」もタブーではなくなってきました。あなたもそろそろ意識を変えて、「男ことば」「女ことば」、「男らしさ」「女らしさ」について、お子さんとゆっくり話す機会を持ってみてはいかがでしょう。
第274回