Q.
子どもたちの小学校と幼稚園は休みになったり再開したりの繰り返しになっています。家族の誰かが感染したら全員が感染しちゃうだろうから不安です。そうなったら私の負担は半端じゃないと思います。最近夫の帰宅も早いんですけど、私の不安が解消されるほど話を聴いてくれません。夫との晩酌でちょっとは気持ちが楽にはなるんですけど、昼間一人でいるとあれこれ考えちゃって、ついアルコールを飲んでしまいます。
最初はワイングラス1 杯だったのに、今では2杯3杯が当たり前。先日、買い物に行った時ママ友に会ったら「お酒飲んでる? 昼間から飲んでるようじゃ中毒かもよ」と言われムカッとしたんですけど、その通りなんです。でもやめられなくて…
A.
若者のお酒離れが進む中、女性の飲酒率は上がっています。30年前と比較して約20%の増加です(2017年日本酒造組合調査)。
女性の社会進出や経済的自立が進みつつある今でも、女性はライフサイクルの中で常に「いい娘」「いい妻」「いい嫁」「いい母」など周囲や社会からさまざまな役割を求められ続けています。もともと日本社会は酒に寛容で、飲むことや酒に強いことを「良し」とする文化があり、何かと酒席が絡みがちでした。コロナ禍で酒席がなくても大丈夫という感覚が浸透しつつありますが、かつては「酒豪」などというと褒め言葉めいた感じもありました。今ではそういう人はアルコール飲料中のアセトアルデヒドなどの毒素を分解する能力が高い遺伝的体質であることが医学的に解明されています。女性がお酒に抱くイメージも変わり、アルコールは「解放」や「エレガンス」のしるしのようになりつつあり、フランスのパステイスというリキュールのラベルには花のイラストが描かれています。
しかしアルコールの中には麻薬と共通する作用のある依存性の薬物の一種エチルアルコールなどが含まれています。鎮静作用もあるので薬代わりに飲酒していくうちに飲酒量が増え、「この不安を解消するためにはお酒がないと」と「精神依存」の状態になることもあります。お酒を飲みたくてそわそわして集中できなくなったり、朝から「迎え酒」をするようになったりすると依存がますます進んでいきます。ママ友に気づかれてしまうほど昼間から飲んでいるとすれば、もはや依存症もしくは「アルコール使用障害」(米国精神医学会)と考えていいかもしれませんね。今ならまだ引き返せますので夫に打ちあけて、ご自分の不安を聴いてもらってください。これ以上、症状が進むと専門の病院や施設でないと治療ができなくなります。「お酒ぐらい」と思うかもしれませんが、麻薬と共通する物質を脳の報酬系が求めているのです。女性がコカインやヘロイン中毒になったら誰もが大変と思うでしょうが、それと同程度のこととお考えください。きっとあなたは子どもたちや夫のコロナ感染のことが心配で不安を募らせていったのでしょうが、夫にしっかりその不安を受け止めてもらい、「自分が子どもや夫をこんなにも愛していて、自分の居場所はここ、この家族、この家庭」ということを確認してください。生活の中でお酒を飲むことの優先順位が上がらないうちに。
case94