Q.
結婚して1年です。「男は結婚したら変わる」なんて言われますけど、結婚前は「彼に限って…」って思っていたんです。いつも自分のことより私のことを優先してくれていたし、器用で気が利くし…。「こんな人と結婚できたら」って思っていたんで、プロポーズ即OKでした。でも、そんな生活はわずか1ヶ月。あっという間に「メシ、まだ?」「靴下どこ?」「Yシャツアイロンかけてくれた?」、最近はついに「おーい、お茶!」。あの広告って、仲のいい夫婦の象徴と思っていたけれどとんでもない。「お茶くらい自分で入れろ!あたしゃおまえの家政婦かぁ!」って怒鳴りたくなります。私が夫を拒否して今や家庭内別居状態。これで子どもでもできたらどうしようってとても不安です。
A.
議長を表す呼び名は「チェア〝マン〞」、消防士は「ファイア〝マン〞」、警察官は「ポリス〝マン〞」。やっと「チェア〝マン〞から「チェア〝パーソン〞」と言い換えが始まり、単語レベルで差別を解消しようとするやり方も少しは効果を上げてきました。小さな子どもの世話をする人は「保母」、病気の人を支えるのは「看護婦」と少し前まで他人の世話をするのは「女性」と決まっていて、生活や仕事の中で明らかな男女差別がありました。言葉狩りでは差別する心はなくならないという考え方もありますが、「俺にはおまえが必要だ」とプロポーズされ、その後の結婚生活が本当に対等な関係になるとは思えません。赤の他人に「おまえ」と呼ばれたらムッとするのに、恋人から呼ばれて嬉しかったのではないですか?結婚前は優しかったとのことですが、実はあなたが腹を立てている男女差別、役割差別は、とっくに存在していたのです。
本来なら性別にかかわらず誰もが等しく教育を受ける権利があるのに、医学部受験の差別に象徴されるように、ジェンダー・バイアス(社会的・文化的性差別、偏見)からの解放、ジェンダー・フリーの理念に基づく教育は、なかなか進みません。小学校に入った途端、担任は女性なのに、校長は男性(小学校教諭の女性の割合は65%、男性校長の割合は82% 平成20年 男女共同参画白書)ということがいかに多いか…。TVをはじめとするメディアでは、あなたの「おーい、お茶」のごとく、類型的女性像、男性像がステレオタイプで流し続けられています。メディアの刷り込みが女らしさ、男らしさの規範を人々の脳裏に日ごと夜ごと焼き付けられているのです。もちろん、文学、アニメ、映画の恋愛や結婚、家庭像も然り。ニュースやバラエティの司会さえも、女性アナウンサーはサブがほとんどで添え物的役割が多いことに気づきます。
日本だけでなく世界中がやっとこの男女差別に気づき始めた今、ちょっと遅きに失した感はありますが、しっかり「お茶は自分で入れてね」と言いましょう。時にはあなたが入れてあげたり、入れてもらったりもありですが(笑)。お子さんが生まれる前に、夫のジェンダー教育をする必要があります。ただし、妻であるあなたも、経済力を夫に頼らず、自らの手で獲得してください。昨今「女性活躍社会」と言いますが、第二次大戦前までは差別はありながらも、女性も男性と同じく生産労働に従事していましたから。
case60