Q.
今年43歳の夫が会社勤めを始めたころ、雇用形態が変化し始めました。すぐに影響が出たわけでないんですけれど、会社に対する夫の意識が変わったことでうちの生活も変わりました。34歳で課長に昇進したと思ったら「自分の力を試したい」とか言って転職、その後2回転職して、今年また転職したいと言い出しました。それも毎回変わらない収入で転職しているので収入は34歳の時のまま。一度も転職しなければ、もっと収入が多かったと思います。子どもにお金がかかる時期なのに…。その上「女性活躍社会だろ、おまえもフルタイムで働いたら?」なんていう始末。まさか「専業主婦は永久就職」なんて思わないけれど、夫が転職するために私がフルタイムで働くなんて考えられません!
A.
父親世代の終身雇用の形態が崩れ始めています。人材サービスのパーソルキャリアが9月に発表した〝転職に対するイメージ調査〞によると、転職をポジティブに捉える会社員の割合は56.4%と半数を超え、すべての世代でポジティブがネガティブを上回る結果になったそうです。転職経験がない会社員の3人に1人が「現在転職を考えている」と回答し、働く側の流動性志向が非常に高まっていることを示しています。転職したい理由についてはほぼ半数の49.9%の会社員が「現在の会社では理想の働き方ができない」を挙げています。あなたの夫に近いミレニアル世代と言われる1980年代から2000年代の人は「プライベートの時間と仕事の両立」を優先して仕事選びをする(79.6%)のですが、シニア世代の50代では「仕事のやりがい」( 75.6%)を転職の理由に挙げています。2018年8月の厚生労働省発表の有効求人倍率は、1・63倍という1974年以来の高水準の売り手市場の傾向が強まる中、あなたの夫のように「自分の力を試したい」と言って転職する人が増えています。
現在43歳ということですから、1999年前後の「就職氷河期」に新卒で不本意な職に就かざるを得なかったのかもしれません。妻であるあなたは給料が上がらないことに不満を持っていますが、夫は「女性活躍社会」だと言って、あなたも働くよう促しています。政府は女性の労働力の活用を目指して「女性活躍推進法」(女性の職業生活における活躍の推進に関する法律)を平成28年4月に施行しましたが、この法律が施行されたからといって実際には女性が社会で男女平等に働けるようになったわけではありません。あなたの夫が「自分を試す」ために昇給を無視して転職を重ねる心意気は認めてあげてほしいものの、実社会では転職の回数も問題で、リクルートワークス研究所の調査では転職の回数の多さがネックになり不採用になった人が64%ということです。経験値の高さが重宝がられる反面、同時に企業は自社に定着する人材を期待するため、転職の回数は3〜4回がボーダーラインと言われます。転職もそろそろ限界のようですが、あなた自身の「主婦は永久就職とは思わない」と言いつつフルタイムでは働きたくないという価値観も見直す時期に来ています。夫の転職とあなたが働くことを切り離して考えてみると違った見方になるかもしれませんね。
case56